Ⅳ 成果と課題
1 研究の成果
(1) 小学校
○ 購入した書籍などを使って地震、津波、火災など、多岐に渡って災害に応じた学習をすることができた。
○ 学年や発達に応じて、教材研究と授業実践を行ったことで、防災に対する意識が高まり、知識が増え、実践力が身に付きつつある。
○ 危機管理室、愛媛研砂防ボランティア協会等の出前授業を受けることにより、自分たちのくらしや命を守るための自治体の取組についての理解を深めたり、体験を通して災害の怖さを理解したりすることができた。
○ 普段あまり目を向けてこなかった防火戸の学習をすることで、自分たちの生活と学校の防災設備について考えるきっかけになった。
○ 予告なしの避難訓練を重ねることで、落ち着いて避難できる児童が増えた。
○ 岩城中学校の防災学習の授業を小学校の教員が参観することで、中学生の学習の様子を知り、小学校での学習に活かすことができた。
○ 学校便りや学級通信、HPで防災の学習の様子を紹介したり、防災の授業や防災学習発表会を公開したり、講演会を開いたりすることで、保護者の防災への関心を高めることができた。
○ 防災体験学習に保護者も参加して、起震車、大雨などの体験を児童と共有することで、防災意識の向上に役立った。
○ 防災カルテを親子で作成することで、避難場所や緊急時の連絡の取り方等について、親子で話し合うきっかけとなった。
○ 非常持ち出し袋を各クラスに一つずつ購入し、参観日に何が入っているか確認したり、どこに置くとよいか、何が足りないかなど話し合うことで、家庭での備えの向上につながった。
○ 中学生と合同での避難場所の確認をしたり、中学生が作成した防災マップを説明してもらうことで、住んでいる地域の中学生とのつながりが深まり、地域で安全に対する理解が深まった。
(2) 中学校
○ 災害の特性を正しく理解したり、災害情報を適切に活用したりする力を養うための授業として、理科や社会科の教科の特性を生かして授業を行った。授業を通して、適切な行動の基となる知識を育むことができた。
○ 教師や大人からの一方的な安全指導ではなく、「何が危険か」「どのように危険か」「どう行動すれば危険を回避できるか」を考える授業として、学級活動や総合的な学習の時間を使って授業を行った。具体的な場面を想定しながら、危険の分析を行い、安全な行動を考えさせることで判断力が養われた。
○ 学習した知識や判断力を生かして、避難訓練などで一定の繰り返し訓練をことによって、思考力・判断力の定着を図ることができた。このような学習活動の積み重ねが、迅速な避難行動につながると考えられる。
○ 保護者や地域が一体となっての防災教育の実践に効果があった。防災意識を問うアンケート結果からも、肯定的な回答が増加している。生徒の感想にも「学校で学習したことを家族に伝え、話し合っていきたい」という感想が多数見られた。
○ 災害の恐ろしさを実感し、防災における「自助」の意識が高まったのはもちろん、他者を思いやったり、自ら率先して行動したりしようとする「共助」の意識の高まりも見られた。
2 研究の課題
(1) 小学校
○ より効果的な指導になるように、学年間のつながりや発達段階を考慮して、系統だった年間計画に改善していく必要がある。
○ 災害が起きた時にとるべき行動に関しては学習を重ねてきたが、被災した後の行動にも目を向ける必要がある。
○ 今後も校外の研修に教員が参加する機会を増やし、資質の向上を図り、今後起こりうる災害に備える必要がある。
○ 児童の防災学習授業や耐震の学習会などに、もっと多くの保護者が参加できるとよかった。
○ 児童も教員も、自分の命を守るための行動を理解し、練習を重ねることができつつあるが、自他の命を守る学習は十分ではない。年齢や立場に応じて、自他の命を守るための行動ができるように学習を重ね、実践力を身に付けていく必要がある。
○ 中学生との避難訓練が、雨天により、それぞれの地域で行うことができていないので、改めて実施する機会をもつ必要がある。
○ 防災カルテを見ると、避難場所が本当にそれでいいのかと疑問に思えるものもあったので、より安全に避難できるように、改良を重ねる必要がある。
○ これからも、いろいろな機会をとらえて地域との連携を増やしていく必要がある。
(2) 中学校
○ 危険を認知する力は発達段階によって異なり、低学年ほどリスクを適切に判断することが難しい。思考力・判断力を付けるためには、継続的、系統的な指導が必要である。
○ 情報のうち何が利用でき、何が利用できないかを判断する力が必要である。情報を正しく理解・分析・整理し、それを自分の言葉で表現したり、判断したりする力を付けるための学習活動を安全教育に結び付けていきたい。
○ 安全指導に偏ることなく、安全学習に力を入れていかなくてはならない。
○ 防災教育は学校だけでは実践できない。保護者や地域、関係機関と協力しながら、さらに研究を深めていきたい。